第11章 研究日誌【アスランR18】※未完作品
4月29日
彼女は自分の名前を知らないと答えた。
知らないのではなく、恐らくは覚えていないのだろう。
腕や体のあちこちには青あざがあり、何かトラブルに巻き込まれていたか、余程恐い目にでも遭っていたのだろう。
「もう恐くないから…」
「……」
少しだけ体を震わせていた彼女を抱くと、彼女はそれに答えるようにギュっと強く抱き締め返してきた。
これから自分が彼女にすることを考えれば、どちらもマシな生活ではないかもしれないが。
「そうだ、これから俺と住むんだから、名前がいるだろ?」
「名前…?私の……?」
俺の膝の上できょとんとした顔を浮かべるところは、幼さが残っている。
「そうだ、君はこれから。だよ」
「……」
「そう、よく言えたね。俺はアスラン、これから君のそばにいるよ」
同僚は、いつも研究対象の名前を番号にしていた。
でも、番号になんてしたら、愛情も興味も湧かないだろう?
名前があるから。
俺は君をこんなに、大事に出来るんだから。