第1章 はたけサクモ先生の葬式
「 はたけ…カカシ君だよね?久しぶり……」
小さな男の子のお父さんが亡くなり、葬儀がしめやかに営まれる中、一人たたずむ後ろ姿を見つけてしまい、私は思わず声をかける。
【はたけサクモ】
木ノ葉の白い牙という異名を持ち、最強と謳われ、伝説の三忍(自来也様、綱手様、大蛇丸さん)の名は彼の前では霞む天才忍者だった。
サクモさんの奥さんは、カカシ君が一歳にもならないうちに病気で先立ち、サクモさんはこの才能溢れる少年を、一人でここまで育て上げる。
偉大なる彼の死因は自殺だった。木ノ葉の仲間や助けた仲間から誹謗中傷を受け心身を患い、自決する。
私はその時期を長期任務で里外におり、サクモさんの、任務の事や、その後の出来事を、里に帰った際に全てを知る事になる。
私が木ノ葉隠れ里に戻る前日に、サクモさんは自らの手でこの世を去ってしまった。
その事実を知った瞬間の記憶が実はほとんど残っていない。それほど私は彼の死を嘆き取り乱し泣き叫んだ。
ーーなぜ、どうして、サクモ先生は、あと一日、せめてあと、半日、私を待ってくれなかったのですか?
ーー私はなぜ、どうしてもっと、あの日、早く帰らなかったの?
ーー何をしていたの?
ーー何をのんびりしていたの?
ーーあなたの大事な人が死んだのよ?
私の心から尊敬した師匠が
死を選んだ日を
私だけが、私一人だけが、この悲痛な一日を知らずに任務を遂行していた。
ひたすらその事を無念に思い、ずっと涙を零していた時に、ふと小さな男の子の後ろ姿が、私の瞳に映り込み、重い身体を動かし声をかけていた。