第2章 はじまり
「な、お前には関係ねぇ!」
「【化け物】はこっちで処理すんだ!」
「っ...」
(【化け物】...?)
青年は何のことかと首を捻りかけたが、少女の頭と腰に人間なら本来無いもの――――真っ白な狐の耳と尻尾――――が着いているのを見て納得した。
(成る程...)
「...ピカチュウ、フラッシュ」
「なっ...!」
青年の肩にいたピカチュウが目映い閃光を発したかと思うと、崖っぷちにいた少女も、青年もピカチュウも居なくなっていた。
「まずい...」
「早く見つけねぇと...!」
「グラエナ、匂いを探れ!」
消えた少女を探しに、男達はまた森へと入っていった。
一方その頃。
「ふぅ...間一髪だった。ナイスタイミングだったぞ、ピカチュウ、リザードン」
あの一瞬のフラッシュで、青年は少女を抱き抱え、リザードンに跨がり空へと逃走していた。
「で、お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「...っ」
青年は少女の顔を覗き込もうとしたが、少女は顔を伏せて上げようとしない。抱き抱えているお陰でよく解るが震えているし、なんなら青年の胸を押して離れようとしている。
「(近年話題になっている誘拐及び人体実験の被害者か...)大丈夫だ。俺は君に危害を与える気はない」
そっと少女の背中を撫でる青年。
その時だった。
ポツ、ポツポツ、
「まずい、雨だ。リザードン、適当なところで降りてくれ」
雨が降りだした。
水に弱いリザードンを気遣い、降りるように指示する青年。
青年はリザードンから降りると、まずピカチュウをボールに戻し、少女を白衣でくるむように抱き抱えようとした。
が、
ピシャッ、ドカーーーーン!
近くに雷が落ちたのだ。
「っ、まずい...!」
雷が落ちた衝撃で、真っ白になる視界。
驚いた少女はさっきまで怯えていた事も忘れ、青年に向かって手を伸ばした。
青年も必死に少女に手を伸ばしたが、届かない。
「待ってて、必ず、君を見つけるから...」
真っ白になった視界が弾けた時、青年も少女も、その場から姿を消していた。
その場に、青年の白衣を残して...