第2章 はじまり
パチパチ、パチッ、
「うっ...」
何かが燃えるような音で、少女は目を覚ました。
「ここ、どこ...?」
さっきまで森の中にいたはずが、今少女がいるのは炎に囲まれた部屋のような場所。先程助けてくれた青年の姿もない。
「あちゅぃ...!」
余りの熱さに思わず後ずさった少女だったが、何かが足に当たった。
「お前は...?」
ふと声がして振り返ると、そこにいたのは床に座り込んでいる甲冑を纏った男性。当たったのは男性の腕だったようだ。
「っ...!」
咄嗟に後ずさろうとしたが、後ろは火の海。
「...仕方ない、行くぞ!」
「やぁっ!」
怯えて縮こまる少女を抱き抱え、燃え盛る部屋から出ようとする男性。しかし、
バキッ、バラバラ、
なんと頭上から炎を纏った瓦礫が落ちてきたのだ。
しかし、落ちてきた瓦礫から男性が少女を庇うより早く、少女は男性の腕から抜け出し、そして、
「あくあてーる!」
バキンッ
水を纏った尾で瓦礫を叩き壊したのだ。
「は...?」
流石の男性も驚いた表情をしたが、直ぐに我に返ると再び少女を抱き抱えて外に飛び出した。
その直後、ガラガラと音をたてて部屋が崩れ落ちた。
「まさか護衛全員を手にかけるとはな...」
炎に包まれ、崩れていく本能寺を見つめながら男性は呟いた。腕には、まだ少女を抱き抱えたままでいる。
「どうやら俺は、貴様に救われたようだな...」
言いながら少女の顔を見ようとした男性だったが、ある事に気づいた。
少女の顔が恐怖一色に染められていることに。
「おい、どうし」
た、と言うよりも早く、少女は男性の腕から抜け出した。
「ぃ、ゃ......」
恐怖の色を浮かべたまま後ずさる少女に対し、少し焦る男性。
「待て、俺は貴様に危害を与える気はない」
言いながら手を伸ばす男性。しかし、
ぱしっ!
「っ...!」
弱々しい力で払い除けられたが、男はある事に気づいた。
払い除けられた手に、氷が付いていたことに。
そして、少女の頭に白い狐の耳、腰のあたりに白い狐の尾が生えている事に。