第10章 ゆーかい
「...ぅ?」
雪月が目を覚ますと、全く見た覚えのない天井が目に入った。
(な、で...?)
起き上がろうとしたが、上手く行かない。
自分の身体が縄で縛られていたからだ。
「ど、して...?」
周りを見ても自分の部屋ではないことは明白だった。大好きな兄の部屋でもない。
なら、此処は何処?
そんな雪月の疑問は、突然部屋に入ってきた男によって解消される。
「お、起きたか」
「...っ!」
少しずつ、安土城の人間と打ち解けていた雪月ではあったが、この目の前にいる男は知らない。
雪月の脳内はパニックを起こしかける。
「...にしても、この人間だか獣だかわからん得体の知れねぇ奴に大金を出すたぁな」
「?」
雪月を見下ろしたまま呟く男。
「よく見りゃぁきれーな顔してんじゃねーか」
「?!?!」
男が雪月の顎を掴んで自分のほうへ強引に向けた。
そのときだった。
パキパキパキッ
「なっ?!」
男に触られたことで驚いてしまった雪月は、思わず冷気を放ってしまった。放たれた冷気は雪月の顎を掴んでいた手を凍らせる。
「っ、冷てぇ!このクソガキがぁ!」
バチンッ
「ひぅ!?」
逆上した男は雪月の頬を殴った。
なおも男は雪月に手をあげる。
「別に痛め付けても、生きてりゃ問題ねぇだろっ!オラァ!」
「いっ?!」
雪月の小さな頭に足を乗せる男。
(いたぃ、だれか...に、しゃまぁ...)
あまりの痛さに声も出ない雪月。その痛みは、折角忘れかけていた過去を呼び覚ます。
「―――――――――っっっっ!!!!」
雪月の声無き叫びが、強力な冷気と共に部屋を包み込んだ。