第7章 こんぺーと
雪月が安土城に来てから数日。
秀吉の世話焼き(又の名をお節介)と家康の治療(最も、雪月が寝てる間にやってるので本人は知らない)によって、雪月は少しずつ元気になっていった。
これは、雪月の怪我が半分程良くなった頃のお話。
「雪月、起きているか?」
声をかけながら入ってきたのは、彼女の兄信長。
「あ、にいしゃま!」
雪月は信長を一目見るや否や、がばっと布団から飛び起きて信長に飛びついた。
「(ふむ、少しは元気になったようだな...ならば)雪月、出掛けるぞ」
「ふぇ?どこ、に...?」
「厨だ」
こうして訳も解らぬままに信長に抱っこされ、連れてこられたのは安土城の厨。
「にいしゃま、なに、してうの?」
信長は戸棚をゴソゴソとやっている。
「金平糖を探しておる」
金平糖、と言われてもなかなか思い浮かばなかった雪月だが、時たま秀吉の目を盗んで政宗が持ってきてくれる菓子だとわかったらしい。
雪月は一瞬鼻をヒクつかせた。
「にいしゃま、こんぺーと、しょこにありゅ、よ」
雪月が指差す先には、他の戸棚。
いやまさかと思いながら信長がその戸棚を開けると、
「あ」
ありました。金平糖。
「貴様、良くわかったな。流石幸運を呼ぶ子狐だ」
「ふふっ」
信長に誉められ、嬉しそうな雪月。その証拠に、ふわふわの尻尾が左右に揺れている。
「褒美だ。貴様も食え」
「いいの...?」
「当たり前だ。貴様のお陰で見つけられたのだからな」
「...あいが、と」
誉められ、更にご褒美まで貰って嬉しそうな雪月を抱き上げ、厨を後にしようとした信長。
だったが...