第5章 ぽけもん
「そんなこと、『はい、そうですか』と信じられるとでも?」
「信じてもらえるとは最初から思ってません...ですが、皆さんは『ポケモン』をご存知ですか?」
「ぽけもん?」
「はい...『ポケットモンスター』、縮めて『ポケモン』。俺がもといた世界ではごくごくありふれた存在です」
佐助はおもむろに懐から紅白の球体を取り出した。
「...出てこい、ピカチュウ」
「ぴかっちゅう!」
球体の中から赤い光と共に飛び出して来たのは黄色い鼠のような生物。
「こいつが、その『ぽけもん』、なのか?」
「はい。この子は『ピカチュウ』と呼ばれている種族です」
「その球は何なの?」
「これは『モンスターボール』と呼ばれる、ポケモンを捕獲する為の道具です...戻れ」
赤い光に包まれるとピカチュウはボールに戻った。
「確かに、そのような技術も生き物も今の日ノ本どころか南蛮でも聞いたことがない」
「...で、何?アンタはあの子の正体がそのぽけもんだって言いたいの?」
「半分正解です、家康さん」
「半分...?」
首を傾げる家康に、佐助は少し苦笑したが、すぐに真面目な表情になった。
「...俺のいた世界では、15年以上前から誘拐が多発していました」
「「「「「「?!」」」」」」
「行方不明になった人に規則性は無く、老若男女や貴賎、出身地も関係問わず、かといって身代金などの請求や本人の安否確認も取れなかったんです...そして、」
「...誰一人、帰ってきた者は居ませんでした」
「「「「「「...」」」」」」
武将達はあまりの驚きに声も出ない。