第4章 きず
「ひゃっ!」
雪月は驚いたような声をあげた。突然信長が雪月を抱き上げたと思うと、雪月ごと布団の中に潜り込んだのだ。
「あ、の...」
雪月は困惑したような声をあげながら信長の顔を見上げようとしたが、大きな手に頭を押さえられ、顔をあげることが出来なかった。
「少し眠れ、雪月......嫌なことなど、全て忘れてしまえ」
とん、とん、とん、とん、
落ち着く体温に抱き締められ、ゆったりとしたリズムで背中を叩かれれば、雪月の目は段々と閉じていく。
そして...
「.......zzz」
余程疲れていたのか数秒で眠ってしまった。
「......」
信長はしばらく雪月の寝顔を眺めていたが、やがて雪月の痩せこけた青白い頬、そして包帯が巻かれ、傷だらけの白い狐耳が生えた頭をそっと撫でてから起き上がろうとした、が...
「?」
ふいにツン、と何かに引っ張られた感覚がしたので見てみれば、雪月の小さな手が自身の羽織をぎゅっと握っている。
「......ゆっくり休め、雪月」
穏やかな顔で信長は呟くと、羽織を脱いで雪月をくるみ、そのまま部屋を後にした。
......その顔は雪月を見つめていたときの『兄』としての穏やかな表情ではなく、目線だけで人が殺せる程鋭くて冷たい『魔王』そのものだった。