第3章 さいかい
「そうだ。貴様は俺の妹であり、俺は貴様の兄であるのだからな...そうだな、これからは『兄様』とでも呼べ」
「...にい、しゃま?」
「何だ、雪月?」
「......っ」
名前を呼んだら呼び返してくれた。初めて名前で呼んでくれた...
今まで自分のことを名前で呼ぶ人間も、頭を優しく撫でてくれる人間も居なかった。
この目の前に居る『にいしゃま』は自分のことを『ばけもの』と呼ばなかった。
痛め付けたり、暴言を吐いて来なかった。
いつの間にか、雪月の大きな目にはまた大粒の涙が浮かんでいた。
信長は雪月を抱っこしながら立ち上がると、居並ぶ武将達に目を向けた。
「良いか、これから俺は雪月を俺の妹として、織田家の姫君として迎え入れる。異論は無いな?」
「「「「「ははっ」」」」」
武将達は全員頭を下げた。
「三成、部屋の準備はしてあるか?」
「はい」
「ならば、政宗、秀吉。雪月を案内してやれ」
「「はっ」」
こうして、織田軍の大将に小さな妹が出来たのでした。
しかし、この小さな子狐がこの戦国時代に嵐、いや吹雪を巻き起こすとは露知らずに。