第3章 さいかい
「......ゆづき」
「...?」
「ならば今から貴様の名は雪月、織田雪月だ」
「...ふぇ?」
「わかったら返事をしろ、雪月」
「......っ、ぁい」
「ん...?」
「雪月様ですか。可愛らしいお名前ですね」
「いや、そういう問題じゃないぞ三成」
「織田ってことは...」
「信長様、まさか...?!」
信長から告げられた名前(つーか苗字)に驚く武将達(一部例外)を余所に、信長は真っ直ぐに少女―雪月―を見つめ、満足げな笑みを浮かべながら、この場に居る誰もが予想だにしていなかったことを問いかけた。
「雪月、貴様、」
「天下人の妹になる気はないか?」
「「「「「?!」」」」」
突然の信長のカミングアウトに、固まる一同。そして、
「はぁぁぁぁ?!」
「流石信長様」
「いや、そういう問題じゃないですよ光秀さん」
「何か問題でもあるのですか?」
「三成、お前は黙ってろ」
「ふぇ...?」
「何だ貴様ら、何か文句でもあるのか」
ざわめく(一部発狂)武将達。ぽかーんとする雪月。
そしてそれを楽しそうに眺める信長。
ハッキリ言おう。シュールだ。
「ぁ、の...,」
雪月が消え入りそうな声をあげた。
「いもーと、ってなに...?なに、しゅるの...?」
「...何もせんでいい」
信長は雪月の前まで来ると腰をおろした。
「貴様を側に置くのは一種の験担ぎだ。本能寺で俺を救った、幸運を運ぶ子狐でもあることだしな...だから貴様は俺の側にいるだけでよい」
「それだけ...?いたいこと、ないの...?」
「その『いたいこと』が何なのかは良く解らんが、貴様を傷つけるような真似はせん」
「ほんと...?」
「本当だ」
信長は雪月の頭を撫でながら言った。
「でも...わたし、ばけ、もの...だから...」
「何を言うか。貴様の何処が化物だと言うのだ」
「だって...」
「口答えするな。兄の言うことぐらい聞け」
「...あに?」
『兄』という言葉さえ知らない雪月は首を傾げた。