第3章 さいかい
「んぅ...」
周り(特に自分を抱き抱えている人物)がうるさいせいか、少女が目を覚ました。
「お、起きたか?」
少女はまだ眠いのか、目をしょぼしょぼさせている。
「何ですかこの子?」
「本能寺で信長様のお命を救ったらしい」
「は?こんな弱くてすぐ死んじゃいそうなのが?」
政宗に抱き抱えられた少女の顔を覗き込もうとした家康だったが、
「...っ」
少女は政宗の胸に顔を埋めたままあげようとはしなかった。
「何この子、愛想悪い」
「いや、それお前もだからな家康」
「...兎も角、信長様が待ってます」
「おう...ってこいつ、このまま抱き抱えてたほうがいいか?」
「...そうですね。人見知りが激しいようですし」
「つか下ろしたら逃げかねないぞ」
少女を抱き抱えたまま天主へと向かう一行。
やがて、荘厳な襖の前に着いた。
「信長様、例の娘をお連れしました」
襖が開き、中に通された。
「ようやく来たか」
広間の上座に座る信長。その周りには先程出会った武将達が座っている。
政宗も少女を下ろすと少し離れた場所に腰を下ろした。
「まずは、先程の礼を言う。本能寺の件、大義であった」
「...?」
少女は何の事だかわからないらしい。こてん、と首を傾げた。そんな少女に思わず笑ってしまう信長。
「して、聞きそびれていたが、貴様、名は?」
「...っ......の...」
「ん?」
「...ば、け...もの...」
「「「「「「?!」」」」」」
広間にいる武将一同は驚愕した。人間らしからぬ容姿(つっても狐耳と狐尾が生えているだけだが)をしていても、まさか名前が化け物だとは予想だにしていなかったらしい。
「それが...貴様の名だと申すか」
「...」
こくり、と少女は頷いた。