第3章 さいかい
「ほら、腹へってないか?」
「......」
お腹は減ってはいるけれど、食べていいのか...?
そう考えているのが顔に出てたのだろう、政宗は菓子を一つつまんで口に放り込んだ。
「ん、旨い。ほら、毒何て入ってねぇぞ」
「...っ!」
とうとう誘惑に耐えきれなくなった少女は政宗の手から菓子を一つつまみ、匂いを嗅いでから恐る恐る口に入れた。
「...!」
「旨いか?」
口に入れた瞬間、目を輝かせる少女に政宗は笑った。
「来いよ。今の菓子、もっと食わせてやっから」
政宗の伸ばした手を、少女は振り払わなかった。
少女の小さな手を掴み、軽々と馬上に引き上げる政宗。
「ほい、捕獲成功。安土に戻るぞ、秀吉」
「まさか食いもんで釣るとは...」
「ほら、飛ばすからしっかり捕まってろよ...はっ!」
少女をしっかりと抱き抱え、馬を駆る政宗。
「あれ俺が隠した信長様の金平糖だろ...」
秀吉の呟きは政宗には届かなかった。
数刻後。
安土城にて。
「おい、着いたぞ...ん?」
「どうした政宗?」
「...こいつ、寝てる」
「は?」
「.....zzz」
政宗の腕に抱かれた少女は政宗の着物の袖をしっかり握りしめたまま規則正しい寝息を立てていた。
「あの状態で寝るか普通」
「それだけ疲れてたって事だろ。でなきゃ図太いのか...にしてもこいつ、軽いし冷てぇな...一体何者何だこいつは?」
「あ、秀吉様、政宗様、おかえりなさいませ」
そう言って二人を出迎える三成。隣には猫っ毛の青年がいる。
「ほう、家康が出迎えとは珍しいな」
「別に、三成に連れてこられただけです」
「お前、もうちょっと笑えよ、人生損だぞそんなんじゃ」
「うるさいですよっ、ちょ、頭撫でないでください政宗さん!」
じゃれあう家康と政宗。まぁ、うるさくしてれば大抵の人は眠りを妨げられる訳でして。