第2章 はじまり
「私は石田三成と申します。信長様のお命を救って頂き、誠にありがとうございます。...ところで、貴女のお名前は?」
「......っ」
少女は信長の脚にしがみつき、震えている。
「...大丈夫だ」
ふいに信長は少女を抱き上げた。
「三成も貴様に危害を加えるような男ではない...三成」
「はい」
「こやつの頭を撫でてやってくれ」
「?かしこまりました...失礼いたしますね」
ぽふっ、なでなで
「...っ...」
最初こそ抵抗があったようだったが、三成の手も信長と同じような優しさがあったことに少女は驚いた。
「...もう、平気か?」
「......(こくり)」
少女は頷いた。
「三成、こいつを着替えさせてやってくれ」
「かしこまりました。行きましょうか?」
「...あい」
今度は三成に抱っこされ、少女はその場を後にした。
そして数分後。
子ども用の着物(尻尾の部分に穴を開けた)に身を包んだ少女は再び三成に抱っこされて天幕へ戻った。
...が、そこには信長だけでなく、先程まで居なかった白髪の背の高い男性もいたのだ。
「本能寺で異変が起きたと聞きましたが、慌てる必要もなかったようですね」
「ふっ、貴様が慌てた事など一度もなかっただろう、光秀」
「光秀様!?」
「三成か...ん?」
光秀と呼ばれたその男性は、三成に抱っこされている少女を見てその細い目を見開いた。
「三成、それh「信長様ぁ!」」
光秀の言葉を遮って天幕へ入って来たのは、茶髪の男性。こちらはかなり慌てていたのか、髪が乱れまくっている。
「信長様、ご無事で何よりです。お怪我はございませんか?!」
「慌てるな秀吉。何ともない」
少しテンパっていた秀吉だったが、光秀に気づくと垂れ目を鋭く細めた。
「光秀?お前何故ここにいる?」
「信長様の危機を知って此処へ向かっただけだ」
「後ろ暗い事がないと信長様に誓えるか?」
「後ろ暗いところがない人間なんぞ、この世にいるのか?」
「はぐらかすな!いい加減腹の底を晒せ!」
ヒートアップしそうな言い合いに終止符を打ったのは、三成に抱っこされたままの少女だった。