第18章 もっとたくさん
先生はドアを閉めた。
ただその音が響く。
「一応鍵、閉めておくぞ」
「…っ」
もういなくなっていたと思ったのに、後ろから声がかけられる。
いつもの、優しくて落ち着く声。
泣きそうになるのを我慢して、なんで、と聞こうとしたら先に返事される。
「体調、相当悪いんだろ?
何かあっても困る。
ま、あんまり頼りになれない案件だが、ここにいるくらいはいいだろ」
「……うぅ…」
なんで、こんなに優しいのか。
迷惑な人に、ここまで出来るのかなって。
どうしても我慢できない気持ちが、またいつもみたいにコップから溢れて、いつもみたいに抱き締めてもらう。
「なんか食えるか?」
「……甘いもの、食べたい…」
「悪化するぞ。
ナッツにしなさい、ナッツに」
そういうことをシないで一緒に寝たのはいつぶりだろう。
寮に来てからは、いつも先に帰っちゃっていなかった。
こんなに優しくされて寝たのは、本当に久し振りだった。
凄く幸せで、このまま死んでしまいたいくらい。
私がいらない子だとしても、この仮初めの優しさでいいから。
もっとたくさん欲しい。
欲張りに、どんどんなる。
「先生、好きです…迷惑って言われても、好きです」
「迷惑とは言ってないが」
「……え?」
「学校では自重しろと。
俺が無職になる」
「迷惑、じゃないですか?」
「…迷惑ではないな」
「ほんと??」
「……もういい、寝ろ」
上から無理やり掛け布団を被されて、話を強制的に切られてしまった。
迷惑じゃない
それが、嬉しすぎて、お布団の中で何回も反芻する。
「先生、好きです…」
「寝ろ」