第16章 やっぱり、
「そいつは轟だな」
「轟くん…?」
「所謂エリート中のエリート」
轟くん、ということだけわかって、少し見地が広がった。気がする。
ふと、その話をしていて、夢のことを思い出した。
「先生、私、夢見たんです。
小さい頃、クラスの男の子を苦しめてしまって……」
「……」
「個性と、関係あるんですかね?」
「…もしかしたらな。
こっちも今調べている。
お前は気にするな」
「はい…」
とは言ったものの、ずっと胸に何かつっかえているものがある。
いずれ、すっきりできればいいんだけど。
「先生…、私、学校でもそんなに先生といますか?」
「……自覚なかったのか?」
「…うっ、はい…」
先生は怒るでもなく、呆れたようにため息をついて、やれやれと髪をかきあげた。
「それは、しょーがない。
身よりもないわけだし、記憶も中途半端だろう?」
「…はい」
「ま、なんつーか、早く他の奴にも頼れるようになるといいんだがな」
先生は、私がこうして頼ることが、迷惑なんだろうか。
でもきっと、こうして生徒に肩入れなんて、本来するべきではないのだろう。
あまり、頼らないように、なるべく会わないように気を付けよう。
少し、寂しいけど。
そう小さく決意した。
ただ、私の気持ちが傾くばかり。
不安で死にそうになる時もある。
崩れないように、優しく支えてくれるその手が、やっぱり、好き。