第1章 非合理的な選択肢
(同情するな、仕事だ)
それでも、たった1人でも、救えなくてどうすると。
「買う、安くしろ。
売れ残りはセールが合理的だろ?」
己が言う。
「……まあ、構いませんよ。
変わったお客さんだ。
何に使うかまでは、聞きませんけど」
ニヤリと司会は笑い、木槌を鳴らした。
「以上で本日の取引は終了致します。
商品の引き渡しは……」
「さて……」
裏口から出され、個性によって小さな玉にされた商品を見つめた。
「何をしてんだか……」
自室について漸く冷静さと後悔が押し寄せる。
給料一月分は裕に吹き飛んだ。
「……」
会場で言われた通り、風呂に湯を沸かし、玉を入れる。
みるみる大きくなり、シャボン玉が割れるように中の人も弾け出る。
「……」
「……こんばんは、お嬢ちゃん」
「……」
「今日からここがお前の家だ」
「………はい」