第5章 胸糞悪い
そこは確かにリアルで、そのままヒトの性器だと認識した。
「っ!ぁ…っ」
塾した果実を割ったように、蜜がこぼれ落ちてくる。
人体を作るリアリティーを追究した、というのは理解した。
果たして、それは必要だったのか。
「あ、ぁっ…!」
肉壁のざらつきや、締め付けなども感じる。
芽の丁度裏側を引っ掻けば、びくっと真っ白な足が跳ねる。
普通の女体より、幾分か敏感だと見受けられる。
とは言っても、ご無沙汰という言葉を当て嵌めたいぐらいに、最近はそんな時間もなかった。
……こんなものかもしれない。
「あっ、いやぁ…はぁ!!」
一際高く甘い声が出たところで、改めてが果てたのだとわかる。
しっかりオーガズムもある。
(あるいは、ソレ用途の……)
こんな首に大傷を作って、尚も生殖機能は生きているんだろうか。
それとも、本当に道具として作られたなら、尚更、胸糞が悪い。
無個性を無理やり作った上に女なら道具にする、
男なら兵器にする。
こんなに、リアルな、普通の娘なのに。
「あっ、あっ、んぅ…っ!」
更に感じやすくなった身体が尚も快楽を貪らんと反応する。
それは同情なんかではない。
そう言い聞かせていたはずなのだが。
「可哀想に」
自然に、その言葉が生まれた。
彼女が最後のオーガズムを迎え、身体に電流が流れたかのように痙攣する。
あまりに色々考えてしまった。
勃つものも、これでは勃たない。
ぐったりと四肢を投げ出したその幼い顔をもう一度見つめ、改めて首に手を這わせた。
しっとりと、汗ばんだ肌が物語る。
確かに彼女は生きていると。
左胸に手を這わせ、確かに鼓動を感じる。
太い生々しい首の動脈も、しっかり脈を打っている。
生きていると。
「……胸糞、悪ぃ…」
ベッドに腰掛け、真っ暗な外に背を向ける。
今日は月すら見えない。
深夜には、嵐が来るだろう。