第37章 【番外編】間
なんとなく、そんな気はしていた。
部屋に入ると、先生がいた。
静かに佇んでいて、どこか、怒っている。
「せ」
「勝手に出たのか」
久々に会っての最初の一声。
低くて、怒っている。
「他に手の空いてる先生がいらっしゃらなくて」
事実を伝えたのに、先生は尚もその静かな怒りをおさめない。
「顔」
「あっ…」
怪我をしてしまったことを指摘され、心配させてしまったことに罪悪感が生まれる。
厚いガーゼ越しに先生の指が這う。
「…ごめんなさい」
また、迷惑だったろうか。
「誰といたんだって?」
「……轟くん」
「……」
「あっ…、せんせ…」
ひんやりとした床が、背中に当たって変な声が出てしまった。
「ん、ん、ぅ、っん…」
息する余裕もないキスだった。
先生、怒ってるんだ…。
うっすらわかるほど、その私を這う手は、怒気に満ちていた。