第4章 興味本位
残念ながら、例のケーキは六時間待ちの大行列で、どうにもならなかった。
始発で行かないと恐らくダメだろう。
致し方なく、昔ながらのマスコットキャラクターのケーキ屋で安いのを2つ包んで貰った。
「残念だったな」
「いえ、大丈夫です」
思ったより落ち込んでいなくて安心した。
折角の遠出だというのに、目的も達成できず、完全に無駄足だった。
自分の性格ではありえないが、それでも、なんとなくそれでいいと思えたのは、嬉しそうに1日横を歩いてくれた彼女のお陰かもしれない。
魔がさした、としか言いようがない。
自室に帰って、宝箱を開ける子供のような顔で彼女がケーキを頬張る。
やっと見れた表情一つ一つが新鮮だった。
見上げて、ありがとうございます、と礼を言う。
こんなベタなシチュエーションで、こんなベタな展開で、本当に嫌気がする。
それでも、この胸のざわつきに名前があるのなら、それかどうかを確かめたかった。
興味本位。というべきか。
だから彼女の唇に自分のそれを重ねた。
もし彼女を買ってしまった理由が衝動買いではなく、一目惚れだったのなら。
少しは合理的だろう?