第34章 【番外編】恋人ごっこ2
目が覚めた時には汗も何もかも綺麗に拭かれて、部屋着を着せられていた。
机には湯気の上がる飲み物が置いてある。
カフェラテだろうか。
牛乳のにおいが、お部屋に似合わないせいかすぐにわかる。
「いるか?」
「………」
声すら出なくて、起き上がりながら頷いた。
腰に響く鈍痛と、力の入らない足に違和感を感じる…。
「それで、たんまり溜まった話でも聞いてやろうか」
「……」
一口飲んで、その台詞を聞いて、後ろのベッドに倒れる。
「むり、です……」
先生は訳がわからない、と言いながら横になってくれた。
「どうすればいい…?
どうしたら、満足してくれるんだ?」
複雑そうに、それでも表情をほとんど変えないで聞いてくれる。
「……」
私は、先生の腕を無理やり自分で回して、
「これで、いいです…」
と声にならない声でお願いした。
懐かしいその体勢が、すごく嬉しくて落ち着く。
「こんなので、満足か?」
「……とっても…」
「なら、もっと早くやってやればよかったな」
「……いいんです」
先生との思い出は、全部かけがえのないものばかりだから。
私はその優しくてちくちくする頬に顔を寄せる。
「先生は、私にとって、たった一人のヒーローですから。
もっと、一人占めしたいですけど、怒られちゃいますから…」
「すればいい」
「うん、あと2日だけ……」
「その先も」
「……っ」
そういう約束だから、そう言ってくれてるんだ…。
あまりの優しさにまたちょっと泣きそうになる。
あと少し、この気持ちのままでいたい。