第28章 【轟編】秘密
その男は、漸く俺から解放されたとでも言いたげな顔で、彼女の眠るベッドのカーテンをゆっくりと開ける。
自分はいていいかわからないが、先生も特に気を悪くさせたような雰囲気はない。
むしろ、諦めとも見せしめとも言えるその光景をただ俺に見せてくる。
まるで聖域だと。
足を踏み入れていいのかとすら思わせる。
柔らかそうな彼女の髪を撫で、見たこともないくらい柔らかく微笑む。
「……せんせ…、来てくれたんですか…?」
「ああ、送ってく。帰ろう」
こくりと彼女がそれは嬉しそうに頷く。
なんと言えばいいのだろう。
この、神聖なる雰囲気とは真反対なような背徳的でどこかゾクリと背筋から下腹部にかけて燃えるような、この、熱は。
──情だ。
たった数分前の会話、なんの変哲もないようで、しっかりとした答えを貰っていた。
情。
熱情であり、愛情であり、欲情であり、その全てを誰にもわからないように教えてくれた。
しかし、この異様なまでの雰囲気を見ずしては伝わらないだろう。
心配してしまったことに一つ、決着はついた。
それと同時に、新たに自分自身のモヤモヤとする気持ちに気付く羽目になるとは思わなかった。
それは、略奪したくなるほどの…………。