• テキストサイズ

ゆるやかな速度で

第9章 7.合宿01


「金ちゃん、かっこええな。でも流石に【名前】たちには毒手はせぇへんで?」
「ほんまに?」
「せや。…てか、金ちゃんが言うこと聞いてくれたらそもそも毒手も出さへんで」

白石くんが金太郎くんを諭すような声音で語りかけるのを私は少しはらはらとしながら金太郎くんの後ろから聞いていた。
私の方が少しだけ背が高いから金太郎くん越しに白石くんも見える。
声音だけでなく表情もとても優しく諭すように金太郎くんを見ていた。

「金ちゃん、いつまでもここにおったら【名前】達の仕事の邪魔になるからコート行こか?」
「試合してもええ?」
「ちゃーんと、素振りとかストレッチとかの準備体操を全部こなした後ならええよ」
「よっしゃー!」

白石くんの声を聞いて金太郎くんは一目散にコートへと走っていってしまう。
それを私達3人は呆気にとられて見ていることしか出来なかった。

「あ」

そして少しの沈黙を破ったのは白石くんの我に返った声であった。
その声を聞いて私も野宮くんもようやく我に返ることが出来た。

「【名前】達も急に堪忍な」
「ううん。大丈夫。それよりも金太郎くん、先に駆けて行っちゃったけど大丈夫?」

私が白石くんに質問をすると、『あぁ』と苦笑しながら白石くんは答えてくれる。

「コートには謙也や銀とかもおるからな。それよりここの作業は後どれくらいで終わる感じなん?」

私達の足元にあった籠を指さして白石くんが質問をする。
私は未確認分のボールが入った籠を見て、今までの作業ペースを元におおよその時間を回答した。

「野宮くんも手伝ってくれてるから、後数十分ぐらい…かな?」
「なら、3人おった方がもっとはよ終わるよな?」
「え」

白石くんの言葉に驚いてしまい私は咄嗟に何も言えなかった。

「手伝うで?」
「そんな!白石くん、他にもやることあるでしょう?ここは大丈夫だから」
「…あ。別に【名前】や野宮の仕事が遅いから急かしてるとかじゃ、あらへんで?」

白石くんが苦笑してそう告げる。
彼が私たちが気にしないようにする為の気遣いの言葉かとも思ったけれど、『あー』と少し言いにくそうにしてから再度苦笑して告げてくれた。
/ 166ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp