第9章 7.合宿01
「ご…ごめんなさい。多分そうだと思いますけど…私、まだ全員の当番の事までは把握しきれていなくて…」
「あ…そ、そうですよね。すみません。つい」
「私の方こそごめんなさい」
彼の気に障らないだろうか?とドキドキしながら謝罪をすれば、彼は私が恐縮してしまう程に頭を下げて逆に謝罪をされてしまう。
その姿に私の方が慌てて再度謝罪をすれば、それに驚いたのか彼はもう1度『いえ!僕も悪いので』と頭を下げて謝罪合戦となってしまった。
このままではきっと私の性格と彼の性格で謝罪が終わることなく繰り返されてしまうだろうと踏んで私は1つの提案を彼に投げかけた。
「じゃあ…お互い様ということで」
「はい」
私が提案したことをに安堵したのか、彼はホッとした表情を私に向けてくれた。
彼の顔をきちんと見れていなかったので、落ち着いてから改めて見ると少しだけ私の様に視線を彷徨わせている人物が私の前に立っていた。
緊張しているのだろうか?少しだけ呼吸を整える様に息を吸ったり吐いたりしてから彼は自己紹介をしてくれた。
彼は1年生で野宮くんというらしい。
練習の為に使用するボールが足りなくなってしまったのでわざわざここまで確認しに来てくれたとのことだった。
私の作業ペースが遅かったのかと悟り、私が再度謝罪を述べると『いえ、そうではないんです』と萎縮されてしまい、私は困惑してしまう。
私の困惑っぷりを察したのか彼はゆっくりと自身の事と、ここへ来てしまった事を話してくれる。
「…僕も実は先輩と同じなんです」
彼も私と同じで小学校の時に親の都合でこちらへ引っ越してきた事。
幸い、身の回りの人達は基本的に良い人で環境にも恵まれていたけれど、従姉妹が少し気が強くて色々と口出しされる事が多くて彼女の影響で少し異性に対して苦手意識があるところ。
だから私の話を聞いて勝手に親近感を持っていたこと。
テニスは前々から興味があったから中学になってやろうと思ったこと。
初心者だから上手くないのは当たり前だと思って基礎練習や体力の作り込みなんかに取り組んできていたけれど、実践形式の練習では何一つ力を発揮できていないこと…なんかを色々と話してくれた。