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ゆるやかな速度で

第9章 7.合宿01


「でも、マネージャーをやるならきちんと仕事しないと駄目だと思うから…」
「うーん、確かに仕事は大事やで?やらないより、やるべきや。でもな、少しは人を頼るのも悪いことではないんやで?」

小春くんが優しく諭すように私にそう告げてくれる。
彼は私の事をきっと分かっているからこうして告げてくれるのだろう。
勿論先程の言葉の最後にも『【名前】ちゃんが、それが苦手なのもわかるけどな』とも付け加えてくれた。
その優しさだけで今の私には十分だった。
この時はその事にあまり触れたくなくて曖昧に笑って誤魔化してしまう事しか出来なかったけれど…。
それでも彼の優しさに私は救われたのだった。

***

お昼を食べてからは皆、小休憩を取ってからは本格的に練習等をこなすとのことだったので、私は持ってきていた備品のチェックをしにテニスコートからは少し離れた倉庫の方へと来ていた。
学校から持ってきているものは普段からチェックされているので簡単に確認が完了していた。
なので今はここで借りられるという備品を確認していた。
流石に毎週の様にここの施設を借りる人たちもいるわけではないとの事でチェックをしている。
ネットは流石に大きいので壊れていたりしたら直ぐに気がつくことが出来るけれども、ボールは1個ずつ確認しなければいけないので私は地道に1人で作業をしていた。

「【名字】先輩?」
「はい!」

確認済みのものを入れる籠へと1個ずつボールを入れながら集中して作業を行っていると急に声をかけられて私は思わず驚いて肩を揺らして返事をしてしまった。
後ろを振り返ると私の名前を呼んだ相手の方が驚愕した表情で私を見つめていた。
きっと私の驚きように、逆に私の今目の前にいる彼が驚いてしまったのだろう。
慌てて『ごめんなさい』と告げてから私は彼に何かあったのかと尋ねると彼は私に声をかけた理由を少しずつ話してくれた。

「それ…この間まで俺が担当していた業務ですよね?」

そう告げられて私は曖昧に頷く。
確かにこういった作業は私が来る前は1年生の人たちが当番制で担当していたと白石くんから以前に聞いたことがあった。
けれども私はまだ1年生全員の顔までは覚えているわけではないので曖昧に頷くことしか出来なかったのだ。
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