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ゆるやかな速度で

第9章 7.合宿01


「……はい。凄くみんな良くしてくれてます」
「そうか…良かったな」
「はい」

でも直ぐに皆の事を思い出して元気に頷く事ができた。
四天宝寺のテニス部の人たちはそれぐらいに親切で良い人ばかりだったから。
私が困っていると手を差し伸べてくれる人ばかりだ。
環境に恵まれた事に感謝していると、頭に手の感触がした。

驚いて見上げれば先生が私の頭を『良かったな』と撫でてくれていた。
なんだかそれがくすぐったくて私は照れてしまう。
きっと先生だから、私の事情も把握しているのだろう。
口や態度には出さなくても心配してくれていたのだと今気付いて私は恥ずかしさと感謝の気持ちが入り乱れていくのを感じていた。

どう返事をしようかと悩んでいると「あー!」という声がこの場に響く。
驚いて声のする方へと視線を向けるとこちらに向かって全速力で駆けてくる、小春くんたちがいた。
直ぐに私の傍までやってくると、小春くんが渡邊先生の手を私の頭から外したのだった。

「あー!もう!【名前】ちゃんに気軽に触ったらあかんで!」
「なんや金色。別に【名字】が嫌や無いんならええやろ。な?」
「は、はい。別に嫌なわけでは…」

私は先生に質問されて、コクコクと頷きながら嫌なわけではないと意思表示をした。
先生は大人の男性だったのと、トラウマになっている彼らとは似ても似つかない人物でもあったので恐怖心自体は無かった。
勿論、急に頭を撫でられる事に対して、積極的にされたいというわけではないけれど。

「ほんまか?」
「【名前】ちゃん、無理せんでもええのよ?」

私の言葉を聞いても小春くんとユウジくんは何故かまだ納得がいかなかった様で再度確認の為に私に質問をする。
私は苦笑しながら『本当に大丈夫だよ』と声をかけて彼らを安心させる為に頷いた。
それを見て2人は『大丈夫ならええんやけど』と納得してくれる。

「お前ら俺の扱い悪いんとちゃう?」
「オサムちゃんが女子中学生の頭なでてるとかパッと見、犯罪やんけ」
「一氏…お前な…」

そんな私達のやりとりを見ていて渡邊先生は不機嫌そうに2人に愚痴を漏らすと、鋭いユウジくんの突っ込みが渡邊先生を襲う。
その言葉を受けて少し傷付いたという仕草をしていたので私は慌てて3人に口を挟んだ。
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