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ゆるやかな速度で

第8章 6.変化


「なんと!有志によるカンパと俺の最近の競馬の当たりで小銭が入った関係で、合宿に行くことになったで」
「え……」
「えぇー!!!?」

先生の言葉に今度は先程の悲鳴とは逆の意味合いの歓声があがる。
先程まで荒れていたはずなのに今度は皆が楽しそうにはしゃいでいるのが私でもわかった。
皆のワクワクしている空気を感じていると、私の近くにいた金太郎くんが元気よく彼の隣にいた白石くんに話しかけるのが聞こえてきた。

「合宿かぁー、ワイめっちゃ楽しみやわー。美味いもんとか食えるんやろか!?」
「金ちゃん、遊びに行くだけじゃあらへんで?」

白石くんは金太郎くんに注意をしていたが、金太郎くんは特に気にしていない様だ。
ワクワクしているのが表情だけで十分に分かる程だった。

「【名前】は!?どう思う!?」
「私?」
「せや!楽しみやろ!?」

金太郎くんを眺めていると、彼と目が合い私も彼らの会話に巻き込まれてしまう。
嬉しそうにキラキラと瞳を輝かせて私の答えを待つ金太郎くんを見て私の頬は自然と緩んでいく。

「そうだね」
「やっぱ、そうやんな!白石!聞いたか!?」
「聞こえとるで」

金太郎くんの声に苦笑しながら白石くんが答える。
金太郎くんを挟んで私と白石くんが立っているので、私の声も勿論白石くんには届いているはずだ。
それが分かっているから白石くんは苦笑しているのだろうなと思った。

「でも遊びだけじゃあらへんで?ちゃんとテニスの強化合宿も兼ねとるしな」
「強いやつと戦えるんやろか?」
「多分四天宝寺のメンバーだけで行くはずやから戦うとしても俺らだけやで」
「えー。じゃあ白石試合やるで!」
「その辺の調整は追々やな」

白石くんの言葉に金太郎は少し不満だった様だけれど、近くにいた千歳くんに話しかけれて興味がそちらに逸れたのか金太郎くんは私達の会話の輪から飛び出していってしまった。
2人だけに残されてしまい、私は何を話そうと思っていると白石くんの方から話題を振ってくれる。
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