第8章 6.変化
そして白石くんに告げられて自分の仕事を全うできていない事を私は思い出す。
慌てて先程の場所へ籠を取りに行こうとすると、そんな私の目の前に先程まで持っていた籠を差し出された。
視線を籠から上へと移すと私に笑顔で籠を差し出す小春くんがそこには立っていた。
「【名前】ちゃん、これやろ?」
「小春くん!ありがとう」
「小春の手、煩わせるなや」
「ご、ごめんなさい」
ユウジくんに怒鳴られてしまい私は反省をする。
小春くんの優しさに甘えてしまったのは確かにいけないことだ。しっかりしなければと反省していると小春くんが助け舟を出してくれる。
「ええのよ。金太郎さんに連れて行かれてたの見とったし気にせんでええよ」
「小春くん…。ありがとう」
「さすが小春やな!天使のような心の広さ。いや!むしろ天使なんやないか?」
ユウジくんはそう言うとブツブツと小春くんへの賛辞を述べていた。
でも隣にいる小春くんは特に気に留めていない様でユウジくんの隣で普通にしている。
その異様ともとれなくもない光景に私は少し驚いてしまう。
彼らが仲が良い事は知っていたけれど、こんなに接している所を初めて見たので少し驚いてしまう。
「ユウジの事はいつも通りやから気にせんでええよ」
「せやで。ユウくんこんな感じなのいつも通りやから、むしろ【名前】ちゃんはこれに慣れへんと」
私が驚いて何も言えないでいると、そんな私を見て苦笑しながら白石くんと小春くんがそう告げる。
本当にそれで良いのだろうかと私が困惑していると、渡邊先生がいつの間にかやってきていたようで私達へと話しかける。
「おー?何か集まっとっるけど何かあったんか?」
「何もないで。で、何か話あるんやろ?」
「せやせや。とりあえず…この場におるやつだけでええか?」
「オサムちゃん、めんどくさがらんと全員集めてや」
白石くんと渡邊先生の会話がテンポよく進んでいく。
私は2人の軽快な会話のリズムに感心してしまう。
そんな2人のやり取りを傍で聞いているうちに、いつの間にか皆は渡邊先生がやってきていた事に気が付いていた様で、私が気が付いた時には先生の周りに人が集まってきていた。
それを確認してから先生は話し始めた。