第8章 6.変化
「【名前】も転校生と?」
「小学校の時に」
「じゃあ、【名前】もお揃いばい」
そう言って彼がニッコリと笑ってくれる。
その笑い方は私に先程まで与えていた印象をガラリと変えてしまった。
勝手に圧倒されて緊張して失礼過ぎると私は内心猛省した。
「あの…ごめんなさい」
「ん?何もされたつもりなかばってん?」
「その、私、失礼な態度を取った気がしてというか…してしまったと思うから」
私がきちんと謝罪をすると、少し驚いた表情をしてから千歳くんは『気にしとらんよ。大きかけん最初はよう驚かれるし』と笑って教えてくれた。
彼もテニス部のメンバーと同様にとても優しい人なのだなと人柄を感じられて私は益々先程の無意識とは言え自身の態度を反省した。
「【名前】は正直やなあ」
「――っ!?」
私が反省をしていると急に彼の大きな手が私の頭を撫でる。
驚いてしまい声のない悲鳴をあげたが、彼はそんな私の驚きは特に気にしていない様だった。
『あの?』と話しかけても彼はニコニコと私の頭を撫でる。
どうしていいか分からず戸惑っていると『ミユキ…妹なんやばってん、それっぽうて』と千歳くんが告げる。
私は妹さんに似ているのだろうか?と思うと、私も金太郎くんの事を弟の様に接しているし、彼も私と同じなのかもしれない。
そう思うと特に嫌悪感もないので、私は千歳くんにされるがままで黙って頭を撫でられていた。
「白石が怖い顔してこっち見よるけん終わりにするわ」
「え?」
すると、千歳くんが苦笑しながらそう私に告げて、撫でていた手を引っ込める。
千歳くんの言葉の意味が分からずに彼の視線の方を見るために振り返れば白石くんがこちらを見ていた。
でも千歳くんの言葉の意味は私は分からなかった。
こちらを見ている白石くんはいつも通りだったからだ。
彼は私達の視線に気が付くとこちらへと歩いてやってきていた。
「そろそろオサムちゃん来るで」
「あ!私、テニスボールの籠!」
やはり千歳くんの言葉の意味は私には分からなかった。
白石くんはいつも通りに優しく私達に話しかけてくれたのだから。
部活が始まる前までは心配していた事が嘘のようで私はすんなり白石くんと会話できた事にホッとした。