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ゆるやかな速度で

第7章 5.始動


「うーん…まぁ、身近な人なら……オサムちゃんやな」
「渡邊先生?」
「せや。別に本気の恋とちゃうで?憧れ的な感じ。大人だけどそこまで年配の先生でもないやろ?それにおもろいし」

綾子ちゃんの言葉で渡邊先生の事を思い出す。
私の場合、あまり先生の授業に当たることが無かったのでそこまで面白いエピソードも持っているわけではない。
でも噂で聞こえてくる先生の話は確かにどれも楽しそうな話題ばかりだったなと納得した。

「あー!【名前】や!」

私と綾子ちゃんが渡邊先生の話をしていると遠くの方から大きな声が聞こえる。
名前を呼ばれたので私は声の方を見ると金太郎くんがこちらに手を振って駆けてくるのが見えた。

「金太郎くん」

私達の所へ辿り着いた彼は楽しそうに笑っていた。
そして私の隣へと視線を動かしてまたもや声をあげる。

「あ!綾子もおるやん!」
「さっきからいたわ!」

金太郎くんの言葉に勢いよくノリツッコミを返す綾子ちゃんは流石だなと思う。
私は2人のやり取りを隣で微笑ましく見守っていた。
金太郎くんは割と天然なところがあるから、綾子ちゃんのツッコミやボケを綺麗にスルーしたりしていて最終的に綾子ちゃんが降参していた。
こういう所は2人とも昔と何も変わっていなくて私は嬉しくなってしまう。
そんな2人のやり取りを暫く見守ってから私は金太郎くんに話しかける。

「こんな所でどうしたの?」
「昼食べ終わったから教室までの道のり歩いてただけやで!」

そう元気よく金太郎くんが答える。
昔から変わらない彼の天真爛漫さに私は微笑ましくなる。
そんな中、この場にぐぅーと盛大なお腹の音が響いた。
私は驚いて金太郎くんを見ると、彼は自身のお腹に手を当てていた。
思った通り、彼のお腹の音だったらしい。

「金太郎くん、お昼は食べたんじゃ…?」
「さっき確かに食べたんやけどなぁ。なんや、また空いてしもうたみたいや」

金太郎くんがしょんぼりとした表情でそう告げる。
悲しそうにしている金太郎くんが何だか可哀相になってしまい私は自分のお弁当のおかずを彼の目の前に差し出す。
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