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ゆるやかな速度で

第2章 1.きっかけ


でも私はこの先もいつまでも、綾子ちゃんの優しさに甘えて生きてくのだろうか?
そんな事は不可能だ。

いつも私を助けてくれる綾子ちゃんは私とってヒーロー…いや、かっこいいヒロインだ。
私にとって憧れであり、心を許せる、明るくて元気でお笑いが大好きな女の子だ。
そんな彼女の隣にいれる事を嬉しく思いつつも、私はこのままではいけないといつも心に焦りを感じていた。

変わりたい

明確に自身の中でこの言葉が出たのは初めてだった。
今まで問題を見ないように先延ばしにしてきていた私が自然と決心がついた様にその言葉が心に浮かんだ。

そうか…私は変わりたかったのだ。
今、私の隣を歩いている彼女のようになりたいと…私も胸を張って歩いていけるように変わりたいと感じたんだ。

「…あのね」

私がポツリと呟く様に発した言葉を綾子ちゃんは聞き逃さなかった様で私の方へ顔を向けてくれる。
いつもと変わらない優しく落ち着いた表情だ。

「私…遥斗が良いなら、白石くんにお願いしてみようと思う」

私の言葉に綾子ちゃんは驚いた表情をした。
今まで一度も男子に関わろうとしてなかった私が自分からそう言ったのだ。
随分と驚いた事だろう。

「…そっか。…【名前】がええなら私は構わへんわ。後で遥斗にも話してやらへんとな」
「うん」

私が頷くと、綾子ちゃんは優しく微笑んだ。
その笑顔に勇気付けられながら私は綾子ちゃんと一緒にいつも通り帰路についたのだった。

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