第2章 1.きっかけ
「ほんで白石くんと連絡先交換したの?」
「…うん」
私の話を隣で聞いていた親友の綾子ちゃんが驚いた声をあげる。
今日の昼休みにあった出来事を、学校からの帰り道に相談したのだけれど綾子ちゃんは始終驚きっぱなしだった。
「で、どないすんねん?大丈夫なん?」
心配そうに私に問う質問を私は受け止める。
綾子ちゃんの言う通りだ。
私は同年代の男子が苦手だった。
その原因となった出来事を知っているからこそ綾子ちゃんは私を心配してくれていている。
今も隣で心配そうに私を見つめている瞳が不安そうな色をしていた。
昼休みの彼との出来事は私にとって驚く事だった。
あの後、彼が私に言った言葉は「もしやけど、俺で良ければ弟さんにテニスの事、教えられる範囲で教えようか?」だった。
勿論、彼は無理強いなんて私にしなかった。
あくまで、もし必要であればというていでのお話だった。
そしてもし必要になったら遠慮なく連絡をしてくれて構わないとも付け加えてくれた。
私は彼…白石蔵ノ介くんと連絡先を交換してから手に持っていたテニスの入門書を図書室で借りた。
男子との連絡先を交換したのなんて初めてだなと思いつつ図書室を後にした。
それからは特に何時も通りの日常を経て、今日は部活がない綾子ちゃんと一緒に帰路についていた。
そして昼休みの出来事を相談したのだった。
「私は…【名前】が大丈夫なら遥斗は喜ぶとは思うけど…無理せんでもええんとちゃう?」
綾子ちゃんが優しく私にそう言ってくれる。
いつも私の事を優しく甘えさせてくれる綾子ちゃんには頭が上がらない。
彼女はいつも私に対してとても優しかった。
上手く男子と話せない時は助け舟を出してくれたし、困っている事があればいつも相談に乗ってくれていた。
綾子ちゃんと一緒にいることはとても心地良かったし楽しかった。
お笑いが大好きだからよく色んなネタや話を私にいつもたくさんしてくれる。
その時間がとても楽しかった。
彼女の隣にいれる事が私はとても嬉しかった。