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ゆるやかな速度で

第6章 4.決断


「あんたには色々と苦労かけてるからな。何も遠慮する必要もないんやで?」
「そんな!私は…別に苦労してるなんて思ってないよ」

おばあちゃんの言葉にカッとなってしまい声を一瞬声を荒げてしまった。

別に自分が苦労しているだなんて思った事なんてなかった。
確かに両親はどちらも仕事が忙しくて家に帰ってくる事なんて殆どない。
仕事が忙しくなった関係で、母方の祖母の家に引っ越してきたあの日から、おばあちゃんは優しく私を見守っていてくれていたし、お手伝いの西村さんもとても良い人でいつも助けてくれていた。
それに遥斗も綾子ちゃんも一緒にいて私は平穏な日常を送っていて1度も家のことで苦労しているだなんて思ったことなんてなかった。
それなのにおばあちゃんはどうしてそんな事を言うのだろうか?と思ってしまった。
だからと言って声を荒げてしまうなんて良くないなと思い、途端に自身に恥ずかしくなって俯いてしまった。

「ばあちゃんの言い方が悪かったわ。堪忍な」
「うーうん…。私こそごめんなさい」
「ばあちゃんはな、【名前】の負担になんてなりたくないんよ」

おばあちゃんの言葉に驚いて俯いていた顔をあげて横を見れば苦笑しながら、おばあちゃんは私を見ていた。

「遥斗はな、ちゃんとやりたいことあるって言ってくれたんよ」
「遥斗が?」
「あぁ」

おばあちゃんの言葉で遥斗がおばあちゃんにもうテニススクールの事を告げているということを知る。
遥斗はちゃんと言えたんだなと私は安堵した。

テニススクールに通うと言う事は金銭面はあまりよく分かってないけれど多分問題ないと思っていた。
問題はスクールに通う事で家の事や送り迎えの方だった。
でもおばあちゃんの表情からして何も問題ないのだろう。

「遥斗も、もういい年齢やで?」

私の考えを見透かしたおばあちゃんがそう告げると私の心臓がドキッと跳ねる。
今の遥斗の年齢ぐらいの時にこちらに引っ越してきていて私も色々と1人で行動することも多かったのに勝手にあれこれ世話を焼いて遥斗を束縛していたという事実に気付かされてしまう。
その事実が突きつけられて恥ずかしくなる。
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