第6章 4.決断
遥斗の世話を焼くことで自分の居場所を作っていた。
遥斗の世話を焼いてるふりをして私が自身の都合の良い様に振る舞っていたという事実がショックだった。
私の動揺を感じ取ったのかおばあちゃんが左右に首を振る。
きっとおばあちゃんは私が悪いと責めたいわけではないと伝えたいのだろう。
それでも私は自身の無意識の行いが酷く恐ろしく感じていた。
「【名前】、あんたが色々とあって遥斗に世話を焼くのは分かるんよ?でもな、その自身の行動を責めたらあかん」
落ち着いた声音でゆっくりと話してくれる言葉に私は耳を傾ける。
「別に遥斗はあんたの事をそんな風に思っとらんわ。安心しぃ?」
「…うん」
「ただな、ばあちゃんも西村の嬢ちゃんも遥斗もあんたの両親もみんな、【名前】には自由でいて欲しいんよ。やりたい事があって、でも家の事を考えてそれを辞めようとするならそれは止めな」
「――っ」
完全に自分の考えが見透かされていた。
マネージャー業…それをやること事態に対する不安も懸念もあった。
でも何よりも部活動をすることで家の事が疎かになりそうで嫌だったのだ。
でもおばあちゃんは好きな事をしなさいと私に告げる。
私が好きに何かをしても良いと言うのだ。
家の事を一生懸命することでそこに居場所を作ろうとしていた私に外のことにも目を向けろと言っているのだろう。
「…なんで分かったの?」
「何年あんたのばあちゃんしてると思っとるんや」
そう言っておばあちゃんが豪快に笑う。
その笑い方は何だかお母さんより西村さんの方に似てるなと思ってしまった。
西村さんは昔からこの家にお世話になっていると言っていたし、雰囲気がおばあちゃんに似ているから私も一緒にいるのが心地よいのかもしれない。
「おばあちゃん…私考えてみるね」
「それがええ」
「ありがとう」
私がそう告げると、おばあちゃんは微笑んだ。
その微笑みは私がとても好きな表情で嬉しくなったのだった。
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