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ゆるやかな速度で

第3章 2.不思議な人



「その……白石くんさえ……迷惑じゃなければ、私…」
「迷惑なんて思っとらんで」

白石くんは今まで私の言葉を遮る事なんてしなかったので驚いてしまう。
私は話しながら俯いてしまっていた顔をあげると、私に向かって優しく微笑んでいる白石くんと目が合う。
その微笑みは、とても綺麗で私を安心させるには十分だった。

私からのお願いなんて普通に考えたら迷惑なものだと思う。
だって、私が異性が苦手でそれを克服したいなんて話し、白石くんからしたら他人事でしかないのだから。
それなのに、優しく、そしてきっぱりとした声音で「迷惑じゃない」と否定してくれた。
その言葉が嬉しくて私は目尻にじんわりと涙が浮かんでしまう。

「ありがとう」

私がそうお礼を言うと、白石くんがこちらへと歩み寄って来てくれる。

「なんか、嫌な態度取る感じになってしもうて堪忍な」
「いえ、私が…その、緊張して話せなくて…ごめんなさい」
「謝罪せんでええよ。むしろ何か焦らせる感じになってしもうたな」

私が謝罪をすればする程、白石くんも申し訳なさそうに謝罪をし、気が付けばお互いに謝罪合戦となってしまった。
それに互いに気が付いた時には2人して何度か謝罪し合った後で、互いにきょとんとした表情になってしまう。
それが何だかおかしくて吹き出してしまった。

「ご、ごめんなさい」
「いや、俺の方こそ」

なんて2人してまた謝罪してしまうからおかしくなって本格的に笑いだしてしまう。
こうやって白石くんと笑いあってるなんて、今までの私では考えられなかった。
今までならきっと緊張し過ぎて笑う事なんて出来なかったはずだ。
でも今はこうして笑い合える様になっている。

どうしてなんだろうか?
白石くんだからなのか、それとも少しずつ自分自身が変わりたいと願ったように変われてきているのだろうか?

白石くんをチラッと見ると、丁度彼もこちらを見た瞬間だった様で目が合う。
今までなら直ぐに瞳をそらしてしまっていたのに、今の私は目を離せないでいた。
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