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ゆるやかな速度で

第3章 2.不思議な人



「そのな…【名前】って呼んでもええか?」
「え?」
「…いや、無理やったらええんやけど、名字やと遥斗と被るなと思うて」

言われて見れば確かにそうだと思った。
私も遥斗も当たり前だが姉弟なのだから名字は同じだ。
ただ、名字とさん付けで呼んでくれてるから遥斗は反応はしないと思うけれど。

でも私は白石くんに【名前】と名前で呼ばれてみたいと思ってしまった。

彼に名前を呼ばれると心臓がドキドキと鼓動が早くなる。
きっと初めて親しくしてもらえた異性だからだと思う。
少しずつ親しくなるにつれて、私も少しずつ変われているような感覚になれる。
それが嬉しかった。

「白石くんが良いなら」
「ありがとうな」

そう言って笑った白石くんの笑顔がとても眩しかった。
その笑顔を見て、ドキドキと心臓がまた煩く感じる。
それがどうしてなのか今の私には分かるはずもなかった。


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