第14章 12.羨望
「!?」
でも私はそれに驚きすぎて小さな悲鳴を出してしまい、しゃがんでいた姿勢のまま横に移動しようと体が勝手に反応してしまい、足が動いてしまう。
けれど、急なことだったので、変な風に動いてしまい、体の重心が後ろに行ってしまったようで、私の体が後ろへと倒れこもうとした時だった。
「危なか!」
そう声が聞こえると、私の体が何かに支えられる。
何が起きたのかと顔を後ろに向けると、私が尻もちをつく前に千歳くんが背中を支えてくれた様だ。
私はお礼を言いながら、彼に支えられながら何とか立ち上がる。
「千歳くん、ありがとう。ごめんね」
「大丈夫ばい。ボーっとしてどぎゃんしたと?」
「ううぅ…また驚かせてしもうて堪忍や、【名前】」
「金太郎くん、私こそボーっとしててごめんね、呼んでくれてたのに」
私が2人に謝罪すると、2人とも大丈夫と返してくれる。
なんだか気を遣わせてしまって申し訳ないな…と思った。
そして2人して私のところに来たということは何か用事があるのだろうか?と思っていると、2人はこれから試合形式での練習がしたいからスコアをつけて欲しいと頼まれる。
私は快く返事をして2人の後ろをついていく。
その時にふと、また視線を感じて振り返ると、特に誰もこちらを見ていなくて私は不思議に思った。
そして、そう言えばこの間から一時期感じていた視線を感じなくなっていることに気が付いた。
でも、今また似たような視線を感じた気がして、私は不思議に思いながらキョロキョロと念のために周りを見渡す。
けれど、みんなが自由に練習をしているだけで、フェンスの向こう側も今日は誰もいなかった。
やっぱり気のせいだったのだろうか?と思いながら、金太郎くんと千歳くんのいる方へと私は駆けていったのだった――。
***