第14章 12.羨望
「あ!別に【名前】があかんとかやないで?体験入部的なもんやからオサムちゃんと相談してな、少しの間やから俺らでって事になったんよ。もし本当に入部してもらう事になったらちゃんと【名前】が面倒見たってや?」
私が驚いて固まってしまったので、白石くんが慌ててフォローに入ってくれる。
私の考えが見透かされているようで少し恥ずかしくなってしまう。
「本当に私、白石くんにフォローしてもらってばかりだね…ありがとう。じゃあ、私はいつも通りに今日はボール出しから始めるね?」
私がそう言うと、白石くんは微笑んで『あぁ、頑張ってな』と応援してくれる。
私は頷いてからボールを出しに用具入れへと急いだのだった。
それからの数日間も彼女が体験入部している事以外は特に変わりのない日々が続いていた。
やっぱりもうすぐやってくる府大会、更にその先の関西大会、全国大会と先を見据えている彼らの練習にも熱がこもっていくのを私も身近で感じでいた。
四天宝寺は去年は全国で準決勝に出ている学校なだけあって今年こそとみんな熱意が凄いのだろう。
そんな中、私みたいな初心者がマネージャーで良いのだろうか?と思わなくもないけれど、少しでもみんなが練習できるように雑務は私が引き受けて頑張ろうと自分に出来る事に熱中しているつもりだった。
けれど、何故か自然と視線は時たま白石くんと野宮さんに向いてしまう時があって、自分のこの集中力の無さはなんなのだろうか?と困惑していた。
今もふと…手を止めて2人が話しているのを見てしまう。
一緒にいる2人は絵になるぐらいにお似合いで、そんな2人を見て私はモヤモヤとした様な不思議な気持ちに浸食されていくのを感じてしまう。
「……【名前】?おーーい、【名前】ーーー!!!」
この間からなんなのだろうか…?と、思っていると、急に私の視界の横から金太郎くんの顔が、にょきっと出て来て私は驚いてしまう。
どうやら私がボーっとしていたので、声をかけてきた金太郎くんが痺れをきらせて顔を覗き込んだようだった。