第14章 12.羨望
「あの子、知っとるわ。1年の美少女ちゃんやろ?めっちゃカワエエ子が入学したって話題になっとったし」
「あぁ、私もそれ聞いたわ。へ~あの子が。めっちゃ目デカ。足細っ!羨ましいわ」
「ほんまな~。てか白石くん呼び出すって事は告白でもするんやろうか?」
「白石くんもついに誰かのものになってまうってこと?何人か死人が出そうやな」
近くで話すクラスメイトの女の子たちの言葉に私は思わず黙って会話に聞き入ってしまっていると、ボーっとしていた私を心配してか綾子ちゃんが声をかける。
「【名前】?気になるん?」
「え!?」
「白石くんのこと」
綾子ちゃんの方へと視線を戻せば彼女が真剣な眼差しで私を見ていた。
私はその目から目をそらすことは出来ず、かと言って何と言っていいかも分からずに少しだけ間が空いてしまった。
「その…、この間ね、テニス部を見学していて倒れた子がいて、その子に似てるなって思って。もしその子なら大丈夫なのかなって」
「倒れた?」
「うん。数日前に暑い日があったでしょ?その時に、日射病っぽい感じで…。白石くんが保健室に運んでたから」
「なるほどねぇ…?」
私の言葉に綾子ちゃんは納得がいったのか彼女の視線も教室の入り口へと向く。
私も一緒にそちらへと再度視線を向ければ、少しだけ話して白石くんは席へと戻ってきていた。
そして1年生の子はその場から去ろうとしていたのだけれど、私と目が合うと少しだけにらみつける様な表情をしたように見えた。
でもそれは本当に一瞬のことで目の錯覚だったのかもしれない。
私は白昼夢でも見たかのような気持ちになったのだった。
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