第10章 8.合宿02
「皆が楽しそうで…つい。変な表情だったかな?」
「そないなことあらへんよ。素敵な笑顔やったからつい見とれてしもうたわ。な、ユウくん?」
「小春の方が素敵やで」
私が正直に答えると小春くんは彼の隣にいたユウジくんに話をふる。
ユウジくんの目には小春くんしか入っていない様で真剣な眼差しで小春くんの手を取り熱弁し始めてしまった。
小春くんはそれに答える様に返事をするとユウジくんが嬉しそうに笑うので、彼のこんな風な笑顔を初めて見る私は少しだけ驚いてしまう。
けれど、それだけ小春くんの事を大切に思っているのだなと分かり、私はまたもや自然と笑顔になってしまうのだった。
「なんや笑ったりして」
2人を見て笑っている私を見ている事に気が付いたユウジくんがムスッとしながら私に言葉を投げかける。
私の方にふられると思っていなかったので私は驚いてしまう。
そしてユウジくんの不機嫌そうな表情に少し不安な気持ちに苛まれながら私は彼に返事をした。
「ご、ごめんなさい。ユウジくんが本当に小春くんの事、大切なんだなと思ったら…つい」
正直にそう告げる私はまだ少し不安だった。
伺うようにユウジくんを見れば彼は目をパチパチと瞬いて驚いた表情をしてから、小春くんに見せていた程でもないけれど、笑顔を私に向けてくれた。
「お前、分かっとるやないか!」
そう言われて今まで私に見せた事のない笑顔で気さくに話しかけてくれる事に驚いてしまって私は何も言えないでいた。
急な彼の変貌っぷりに私はついていけていなかったけれど、彼は気にせずに話を続けていく。
「別に分かっとればええんや」
「え、あ、うん」
私の事はお構いなしに楽しそうに小春くんの話をするユウジくんの言葉を私は戸惑いながらも聞いていた。
あまりの勢いに呆気に取られてしまい上手く返事をすることは出来なかったけれども、そんな私の事を気にせずにいてくれた事は有難かった。
そして目の前で繰り広げられるユウジくんの演説や、それを聞いて惚気る夫婦漫才を始めてる2人を私はただ黙ってみていた。
でも何か言ったほうが良いのだろうかと段々と不安にもなってきてしまい少しオロオロとしていると更にこの場に違う人の声が響いた。