第9章 7.合宿01
目の錯覚かと思い、私はゴシゴシと目を擦ってみたけれど何の変わりはなかった。
いつも通りの白石くんがそこにはいた。
なのに私の目に映る彼はとても輝いていてかっこよくて、私は一体どうしてしまったのだろうかと困惑してしまう。
「【名前】…?【名前】!」
「え、あ、はい!」
急に白石くんに声をかけられて驚いて声をあげてしまう。
そんな私を見て、驚いた表情で白石くんはこちらを見ていた。
「もしかして寝てたん?」
「そ、そんな事は!」
私の体調を気遣う様に白石くんが質問を投げかけるので私は慌てて首を左右に振りながら否定をする。
その動作に白石くんは寝ていたわけではないと分かってくれたのか『ならええけど』と返事をしてくれた。
「もうそろそろ上がろうかと思っとるんやけど」
「あ!ご、ごめんなさい、気が付かなくて。これ返すね」
「ええよ、ええよ、着たままで」
慌てて借りていた白石くんのジャージを返そうと脱ごうとすると、直ぐ様白石くんに停止の声をかけられてしまう。
そう言われてしまったので私は少しだけ脱ぎかけていたジャージを再度着直した。
「じゃあ、お言葉に甘えて…。でも片付けは手伝うね」
「俺的には正直風邪引かないか心配やから早めに建物に返したいんやけど……片付けせぇへんとは……いかないよな?」
白石くんのその言葉に私は苦笑しながら頷く。
流石に後片付けを白石くんにだけさせて『さよなら』は私には出来なかった。
私が頷くを見て白石くんも苦笑しながら『よろしく頼むわ』という言葉を投げかけてくれる。
そう言ってから白石くんは反対側のコートへと歩いていった。
そちらに転がっていったボールを拾いに行ってくれたのだろう。
私は、白石くんのその言葉を聞いて頷いてから自身の周りに散らばっているボールを拾い始める。
頭の片隅で白石くんは本当に気遣いの出来る人だなと実感していたのだった――。