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ゆるやかな速度で

第9章 7.合宿01


どうやらスコアブックを確認したまま私は机に突っ伏してうたた寝してしまっていた様だった。
変な格好で寝ていたから、またあの時の夢を見てしまったのだと気付いて私は苦笑する。

ふと部屋にある時計を見れば21時が近くなってきているぐらいの時間だった。
この時間なら気分転換も兼ねて先にお風呂に行こうと思い立つ。
必要なものを小さな手提げ鞄に詰めて私は部屋を出る。
確か先生に教えてもらった女性用のお風呂は別館にあったはず。
部屋の鍵をかけてから私は別館の方へと歩き出したのだった――。

***

別館に向かう為に一旦外に出なければいけなくて私は室内靴を備え付けの外履きへと履き替える。
そして外をゆっくりと歩いて別館へと向かっていく。

ゆっくりと歩いていると夜風が少しだけ肌寒いなと感じる。
こんな事ならもう少し厚着すれば良かったかな…と思った。
下は着替えずに学校指定のジャージのままだったが上は薄手の長袖に着替えていたが夜風は春にしては少し冷えていた。
そんな事を考えながら別館へ向かって歩いていると遠くの方から音がした気がした。

「…?」

いつもなら気にならない程度の音なのに私は何かに導かれる様に音のする方へと歩いていく。
確かこちらの方角はテニスコートがあった方だ。
誰かがまだテニスをしているのだろうか?と思いながら進んでいくと、思った通りにテニスコートで人影が段々と見えてくる。
コートにいる人物は自身の近くにボールの入った籠を置き、一心不乱にボールを反対側のコートへと打っていた。
私がコートに近付いても気付かない程に真剣にコートの中の人物は集中している。

予感めいたものがあったが、やはりコートの中にいた人物は白石くんだった。
彼がボールを上げてサーブを相手コート側へと何度も何度も打つ。
それは私が何度も読み返したルールブックの中のお手本のフォームと同じだった。
彼は正確で綺麗なフォームを描いてボールをあげてからラケットで打つ。

小気味いい音と共にラケットにボールが綺麗に当たる。
そのボールは勢いよく相手コートへの中へと吸い込まれるように綺麗に決まった。
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