第9章 7.合宿01
『……お、おかしくないもん』
『うわ、よそ者がよそ者喋りしとるー』
『……』
練習した関西弁で話しても駄目、元々の言葉で話しても駄目。
私は段々とどう話したら良いのか分からなくなってしまっていた。
横目にはハラハラと心配そうにこちらを眺めるだけのクラスメイト達。
彼らに逆らうのが怖いから誰も私を助けようとはしなかった。
でもそんな中、教室によく通る声が響いた。
『あんたら、ほんまカッコ悪』
『はぁ!?なんや、山下。またお前かよ』
『【名字】さん、別に変やないし。大丈夫やで?』
いつの間にか私の横まで来てくれた小さな綾子ちゃんがいた。
この頃はまだ転校してきたばかりで、友達もうまく出来ずにいたので私と綾子ちゃんがちゃんと会話をするのも多分初めてだったはずだ。
この時に助けれくれた綾子ちゃんを私はカッコいい女の子だと思ったのだ。
『あ、ありがとう』
『ええって、ええって。行こ?な?』
優しく笑って綾子ちゃんが私の手を引いてクラスから連れ出してくれた。
綾子ちゃんは勇敢でかっこよくて、可愛らしい女の子だった。
私と一緒にいるとあの人達にちょっかいを出される事も段々と増えていったのに
『かまへん、かまへん。あいつら【名前】の可愛さについちょっかい出したいだけや。ダッサイ奴らや』
なんて言って私を励ましてくれていた。
その優しさに私は甘えていた。
初めてこちらに来て出来た友達に舞い上がっていたのだ。
東京にいた頃の友達と離れて、両親も仕事が忙しくて家にもあまりおらず、まだ小さい弟の世話で忙しい祖母達の手をかけさせたくなくて、私は1人で抱えているのが苦しかったのだ。
だから綾子ちゃんの優しさに甘えてしまっていた。
でもそれが間違いだったのは数ヶ月後にすぐわかる事になる。
だって……、私のせいで彼女が怪我したのだから。
"お前のせいだぞ"
「――っ!」
声に驚いて飛び起きるとそこは見慣れない部屋だった。
ぼんやりとした頭がクリアになっていくにつれて合宿所の自分に与えられた部屋だと思い出し私はホッと安堵の息を吐いた。