第9章 7.合宿01
視線を追った先にいた白石くんはコートの端で小石川くんと話していた。
多分コートに戻ってきたばかりだからいなかった間の話を小石川くんから聞いているのだろう。
そんな白石くんの姿を私はボーッと見てしまっていると、声をかけられて慌ててしまう。
「…なぁ、【名前】聞いとる?」
「!?」
金太郎くんの声がして私は我に返った。
視線をきちんと目の前へと向ければ金太郎くんが拗ねた表情で私を見ていた。
「ご、ごめんね。聞いてるよ。それとね、私これから金太郎くんの試合のスコア取るからどこのコートでやるか教えてもらっても良いかな?」
「ほんまか!?わー、【名前】が見とってくれるならめっちゃ嬉しいわ!ワイはこれからあっちやでー!」
金太郎くんがコートを指差す先には既にもう石田くんが立っていた。
これから金太郎くんは石田くんと試合形式の練習をするということなのだろう。
2人ともパワーがとてもあるプレイをするので迫力がありそうだなと思った。
そして頭の片隅でそんな事を考えているうちに、金太郎くんに連れられながら私はコートの側までやってきた。
「【名字】はんがスコア取ってくれるんか?」
「はい。そこのベンチで見てますね」
私が頷いてからコート側のベンチを指差すと、私の方を見てから石田くんは『スコア、宜しく』とでも告げるかの様に丁寧にお辞儀をしてくれた。
その所作があまりに綺麗で思わず見とれてしまったけど、いつまでもここにいては2人の試合が始まらないと慌ててベンチに座る。
「ワイが先攻でもええか!?」
「あぁ、かまへんで。金太郎はん」
「よっしゃー!じゃあワイのサーブからや!」
そう告げてから金太郎くんはサーブをするラインまで下がる。
先程までの天真爛漫な表情からはガラリと変化して金太郎くんは真剣な眼差しでボールを高くあげる。
そして、爽快感あるラケットでボールを打つ音がすると同時に私はコート内のボールを目で真剣に追い始めたのだった――。
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