第2章 1.きっかけ
「私は……遥斗が望むならその意見を尊重したいな」
「…うん。俺、テニス気になるわ。姉ちゃんがええならお願いしたい」
遥斗の言葉に私は静かに頷く。
それを見て、遥斗は嬉しそうに笑った。
遥斗がそれほど言うと言う事は、きっと新学期に新しく友達になった子がとてもいい子なんだなと思った。
私は「じゃあ、白石くんに聞いてみるね」と返事をして、食べ終わった夕飯の食器を片付ける。
私の言葉に嬉しそうにはしゃぐ弟を見て、私まで何だか嬉しくなってしまい食器を洗いながら鼻歌を歌ってしまう程だった。
***
「……」
そして今現在私は悩んでいた。
遥斗に話して白石くんに連絡する事は何も問題なかった。
ただ、その連絡する方法の方に問題があった。
なんて文章を書こう
それだけだった。
綾子ちゃんとは結構な頻度で連絡し合うが、今までの付き合いの長さからか気軽に文章を書けた。
でも白石くんは初めて連絡する相手。
しかも今日初めて話した男子だ。
なんて書いて良いのか悩み始めてしまい結構な時間が過ぎていた。
部屋の時計をふと見ればもう結構遅い時間だ。
寝てしまっていたら失礼過ぎるなと余計に焦ってしまう。
でもこのままでは先に進めないと意を決して私は硬すぎる文章をしたためて白石くんへと送信する。
そして携帯を所定の場所へ置き、ベッドへ体を預ける。
いつもの自分のベッドだ。
見上げた天井もいつも通りで何も変わらない。
瞳を閉じて今日の出来事を振り返る。