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ゆるやかな速度で

第2章 1.きっかけ


今までの私にしては、かなり積極的に行動した方だと思う。
小学生の時に転校してきて、すぐにあの出来事を体験して、同世代の男子が特に苦手になってしまった。
あれから上手く話せなくなってしまい、いつも綾子ちゃんに助けてもらってばかりいた。
このままじゃいけないって今まで何度も思っていたのに踏み出す事が出来なかった。
綾子ちゃんは優しいからいつも笑って私に「【名前】が気にする事じゃない」って言ってくれていた。
その優しさに甘えてばかりいる自分に嫌気がさしていた。
それでも踏み出す勇気が持てなくて停滞していつも同じ場所で足踏みしてばかりだった。

でも…今日は少しだけ踏み出せたんじゃないだろうか?
いつも足踏みしてばかりだった場所から小さいけど一歩を歩み出せたのではないだろうか?

ふと思いますのは図書室での白石くんの顔だった。
整った顔立ちは、まるで昔読んだ少女漫画の王子様の様だった。
落ち着いたトーンで優しく話しかけてくれる声音は嫌悪感もなく、私でも何とか話せる程だった。

不思議な人

何となくそう思った。
なんでそう思ったのかは分からなかったけれど、私が白石くんに抱いた第一印象だった。
そんな彼と私が今後少しずつ距離を縮めていくことになるだなんてこの時の私はまだ知らなかった。

これが私と彼の初めて会話した時の出来事だった。


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