第15章 仲間と彼女
「さぁ!その包丁から手を離すっス!」
メンバーが彼女達の方ヘ向かう中…
彼女は未だ興奮する女を落ち着かせるのに手を差し出していた。
女は彼女の手を振り払い、凄い剣幕で怒鳴り付ける。
「何なの!?本当にあんた邪魔なのよ!!私はテヒョンだけがいればそれでいいの!彼が苦しんで、私を覚えててくれればいいのよ!!」
なんて、勝手なのだろうか、
彼はこの人にとってどういうものなのだろう
人形か、それとも…物か何かなのだろうか……
彼女はそう眉間にシワを寄せ、女を見た。
「何?その顔…」
女がそう不満げに彼女に言えば…
彼女は後ろにいるテヒョンに笑いかける
「テヒョンさん!ちょっと!今からは、私事なので…口調に関してはノウカンッスからね!」
何を言うつもりなのか…彼には分からなかったが…
彼女の言葉に彼はただ静かに首を縦に降った。
彼女は彼から同意を得ると、
女の方を指さし、冷たい瞳を向け……こう言った。
「聞いていれば…ふざけるなっ!…随分…勝手な人だな……彼は…君にとって、人形かなにかなのか?
違うだろ?彼は…ちゃんとした人だ…
努力し、ここに立つ立派な人なんだよ…
人は…君の思い通りにならないなんって…君でも、わかっているだろう?」
「わかってるよ!!でも、…少しでも見て欲しかった…」
彼女は女の悲痛な叫びにそっと優しく女の手を包みこむ。
驚く女は手を振りほどこうとするが…
彼女が女の手を離すことは無かった。
彼女は女の手を掴み、今度は先ほどより優しい声色で彼女に語りかける。
「君の気持ちはきっと…強いものかもしれない…
でも、大好きな人を自分から捨てるだけは…君が悲しくなるだけだよ……」
彼女の言葉が届いたからか…それとも…自分の過ちに気づいたからなのか……
女はその場に崩れ落ち…涙を流し始めた。
「っ…わかってたよっ…遠くなっちゃったのは…っ!?でも、…それでも…見て欲しかったの!!…」
「そうだね…辛いね…でも、これだけは、忘れないで、自分で大切なものを切り捨てないで………いざという時辛いから……」
彼女の言葉は実に重く、まるで、体験したかのような話で、
女の背中を撫でながら彼女は遠くを見つめている。
すると、女が彼女に訪ねた。
「あの……貴方の名前は」
「私?私はねぇ……」