第2章 水色~黒子~
咄嗟に答えられない僕に、△△さんの表情が緩んだのが分かりました。
それは目の前だから分かる程度の、微かな笑顔。
(『あの頃』よりも、△△さんはよく笑うようになりました)
無理な笑顔じゃなくて、作った笑顔でもない、そんな△△さんを見ていると、僕はいろんなことを思ったり、考えたりしてしまいます。
△△さんにだけそうなる自分を、どうしてだろうと考えたこともありました。
でも今は……。
(僕は…きっと……)
座ったまま見上げる僕に、△△さんが少しだけ首を傾げました。
それは、ちょっと考え事をしたりする時の、△△さんの癖……。
何を考え込んでいるんでしょうか。
不思議に感じる僕の目の前で、△△さんは何かを思いついたように、にこ、と笑いました。
これは、はっきり言って。
(心臓に悪いです、△△さん)
だけどそんなこと、△△さんは知らないまま。
「今日の図書当番、私一人でも大丈夫だよ」
いきなりそんなことを言い出す△△さんに、僕はまた驚かされました。
ちなみに、僕と△△さんは図書委員をしています。
今日は確かに図書当番(貸出や返却、その他図書のデータ管理を行ったりします)の日ですが。
(一人でも大丈夫…とはどういう……)
考えかけて、僕は何となく気が付きました。
そういえば以前の当番の時、バスケの話になったことがあります。
放課後はもちろん、朝練もあると何気なく話した僕に、△△さんは『すごいね』と感心したように笑って、それから少しだけ心配そうな表情で『でも大変だね』と言ってくれました。