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What color?~黒子のバスケ~

第1章 共通章 何色?


あの頃の私には、とてもじゃないけどハードルが高すぎた。
だけど。

『だいじょうぶ』

そう言ってくれた。
それでも自信がなくて俯く私に、『あの子』はもう一度、言ってくれた。

『きっと、だいじょうぶだから』

その言葉に背中を押されて、私は前の席の男の子に話しかけることができた。
たったそれだけのこと…っていえばそうだけど、あの頃の私にとって、それはすごく勇気のいることだった。

嫌がられたら、どうしよう?
迷惑そうにされたら?
意地悪されたら……?

引っ込み思案で人見知り。
そのせいかネガティブ思考だらけだったあの頃の私は、お願いするだけで泣きそうだった。

『あ、あの…えのぐ…かして、くれる……?』

もう、それだけでいっぱいいっぱい。
そうしたら。

『うん、良いよ。何色?』

振り向いた『その子』は、私の言葉を受け入れて、頷いてくれた。

『あっ、えっと……』

私は『あの子』の…ううん、違う。

『大丈夫』って優しく背中を押してくれて。
『良いよ』って受け入れてくれた。

『あの子達』のお陰で、絵の具を借りることができた。


「なんか、懐かしいな」

そんな私も、今では高校一年生。
っていっても、引っ込み思案も人見知りも、実は今もまだ引きずっていたりする。

持って生まれた性格(なのかなやっぱり)は、なかなか変えられないらしい。

でも考えてみたら、『あの子達』と関わった、あの頃から、私はちょっとずつだけど変われた気がする。

小学校から中学校へ。
それから高校を受験して。

人見知りはなくならないけど、初めて会ったクラスメイトを前にすると結構緊張もしたけど…でも話しかけられるようになった。

小学校の頃よりも、友達もできた。
そう思うと、ちょっとは成長できたかなって思う。

『だいじょうぶ』
『うん、良いよ』

今でも覚えてる、二つの声…二つの言葉……。

だけど思い出に浸ってる余裕は、朝の私にはなくて。

「わ!?遅刻しちゃう!」

私は鞄を手に、慌てて家を飛び出した。

久し振りに見たあの頃の夢に、少しだけぽかぽかする胸を抱きしめながら。

「いってきまーす!」
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