第1章 共通章 何色?
『だいじょうぶ』
『うん、良いよ』
それは懐かしい…二人の男の子の声……。
そこで、私は目が覚めた。
「あれって……」
目が覚める寸前まで見ていた、あの夢……。
あれは確かに夢だけど、でも、ただの夢じゃない。
昔…実際にあった出来事だと、私は思い出す。
あれは、そう…小学校の、3年生くらいだった…と思う。
授業で絵を描いていて、その時、手に取った絵の具を使い切っていたことに気づいた。
だけど、引っ込み思案だったあの頃の私は、友達に頼るってことが上手くできなかった。
何でもないことは平気で喋ったり、一緒にふざけたりできるのに、本当に困ったりすると、話しかけるタイミングが掴めない。
どんな風に切り出したら良いか、分からない。
不器用でタイミングが悪い、それが私…だった。
そのまま、どうにもできずに途方に暮れていた私に、『あの子』が話しかけてくれた。
『どうしたの?』
それはすぐ後ろの席から聞こえた、男の子の声。
ぺちゃんこになった私の絵の具を見て、彼は自分のを貸してくれようとしたのか、箱を開けた…けど。
『あ……』
自分も使い切っちゃってた、と呟いて。
それから、『あの子』は言った。
『その色、……くんなら持ってるかも』
『え……?』
それは私の前の席の男の子の名前…だった。
だけど『その子』とは特に仲良しなわけじゃない。
席が前と後ろっていうだけの、喋った記憶もないような、そんな男の子。
そんな相手にいきなり話しかけて、その上、絵具を貸して欲しいってお願いするなんて。