第2章 水色~黒子~
みんなはどうしたのかと○○に訊けば、カントクと一緒に先に帰った(というよりカントクに連行されたらしいですが)そうで。
「そうですか。では○○は、僕を待っててくれたんですね」
すみません、という僕に、○○は首を振りながら隣に座りました。
「私は全然、平気だよ。テツくんこそ、大丈夫?」
「はい。もう大丈夫です。普通に歩けます」
「本当に?だって、あんなに疲れてたのに……」
そう言いながら、○○がいたわるように僕を見ました。
ミスディレクション・オーバーロードを使用したことによるリスクも、木吉先輩の膝のことも全て、○○には隠さずに伝えてあります。
だから、○○が浮かべる表情の意味も、僕にはすぐに分かりました。
ですが……。
「大丈夫です」
「あ……」
僕が口にした途端、○○は、はっとするように瞬いて、そうだね、と小さく笑ってくれました。
「そうだよね。これからのことは、またこれから頑張れば良いんだよね」
「はい。先のことは、またその時に考えます」
「うん」
「○○もいてくれますし」
「えっ!」
「いてくれないんですか?」
「そ、そんなことないよ!も、もう、意地悪だなぁ!」
また真っ赤になって、少しだけ僕の胸を押す仕草をする○○が可愛くて。
「○○……」
「ぇ……っ」
僅かに開いていた距離を詰める僕に、○○が驚くのが分かりましたが。
○○に、触れたくて……。
「○○」
小さく名前を呼ぶと、○○の手が、おずおずと僕の腕に触れて、
「テツくん……」
○○の温もりと、返してくれる声とに、僕は抱きしめる腕に力を込めました。
桐皇との試合…当然ですが、相手ベンチには桃井さんの姿もありました。
桃井さんのことです。僕の大切な人が○○だと、恐らく気づいたでしょう。
でも、もう二度と、○○に誤解させるようなことはしません。
不安にさせるようなことも…絶対に……。
皮肉なことかもしれませんが、桃井さんとのことは、今では少し勉強になった気がします。